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枕状溶岩 クッキー
西伊豆町一色

枕状溶岩 クッキー

アーモンドと桜葉の枕でよい夢を…

バター、アーモンド、小麦粉、コーンスターチ、砂糖、西伊豆産さくら葉

伊豆半島がまだはるか南の海底にあった約2000万年前に、海底噴火によって流れ出した 粘り気の少ない溶岩は、海水に触れてチューブ状に冷え固まりました。その様子が積み重 ねた枕のように見えることから、枕状溶岩と呼ばれています。西伊豆町の仁科川流域に分 布する、伊豆半島でもっとも古い地層、仁科層群にこの枕状溶岩が見られます。


伊豆半島の西側は線路がない。半島を一周されたかたは感じるだろう、西と東、ぜんぜん違う。。。と。そうなのです、景色が全然違うのです。

地形的な最大の特徴は伊豆半島北西方向に沈下するフィリピン海プレートのせいで東は隆起、西は沈下しているところ(雲見浅間神社の展望台から望める山々が海に沈んでいるかのような景色に萌えます)。

また、波に削られてできた波食台が見られるのは東海岸線ならではの景色です。
東は朝日、西は夕陽が堪能できる。太陽を追って巡る伊豆もいいですね。

前置きが長くなりましたが西伊豆町の一色。
こちらは伊豆半島の地層のなかでも一番古い、約2000万年前の海底火山でできた溶岩が見られる路頭。
伊豆半島が生まれた原初のような場所です。

海底であっついマグマがホースを押しつぶしたようにチューブ状でムリムリ〜っと湧き出てきたところ。すかさず冷たい海水の洗礼。それでもって後続からは押すな押すなの大騒ぎ。出ては冷え、出ては冷え、モクモクと水中でけむりを立ちのぼらせながらドラマチックに出来た、きっと見応えのあるだろう景色を想像します。現在の路頭をみるからに”スン”としておりますが、「そんな時代もあったよね」と、当時の様子に思いを馳せながら見てみることレコメンド。

ここからお菓子の甘い解説


というわけで枕状溶岩クッキー(伊豆産桜葉入り)を作りました。

桜葉は桜餅など和菓子に使われるあの桜葉なのですが、実は伊豆半島、生産量の全国シェア7割を占めます。
明治時代、この土地ももれなくお蚕様の飼育が盛んな場所でしたが、その蚕の好物、桑の葉が大量に必要とされていました。木を大きくせずいかに多く葉を収穫するか、そのノウハウをこの土地の人は持っておりました。時は流れ、絹糸がナイロンに変わるとともにお蚕さん産業が廃れてしまったのです。木の葉を効率よく収穫する技術を地元の方は大島桜の葉の収穫に生かしたのです。とんでもなく先取りされた葉っぱビジネスです。
地元では桜葉収穫バイトを子供の頃よくやったよ、いいお小遣い稼ぎになったさ。という年配者の声も。

アーモンドプードル(アーモンドの粉末)をふんだんに使用し、時々混ざる、アーモンドスライスが食感を面白くしています。
塩漬けされた桜葉のチャンクを練りこみ、噛むごとに鼻に抜ける桜葉の香りとほのかな塩味が味に深みをだしてくれます。ちなみにこの桜葉、枕状溶岩が熱水変質して冷えた際、火山ガスの気泡内にてまんまと結晶した緑泥石(りょうくでいがん)と緑簾石(りょくれんせき)を模しています。
クッキー表面にアイシングをほどこしていますが、それも急冷されできたガラス質の膜をイメージしました。

ジオ菓子全体に言えるのですが、こちらのお菓子を作るとき「よいしょ〜!」と気合いを入れないとダメなくらい、アホのような手間暇がかかっていることもお伝えしておきたく候。

参考文献
仁科層群の枕状溶岩群について
(静岡県地学会発行、静岡地学113号、2016年)